伝統もあり厳しい審査で定評がある新制作展で、五十嵐健治先輩(s42入学)が連続16回入賞の偉業を成し遂げた。
今回の作品のモチーフは、やはりハチであり、タイトルは ”Where's been hive” とし、200号の大作である。
右側の巨大なハチが、俯瞰的に時代環境の変換をみつめ、嘆いていると思われる。ハチはコロニーを形成しネグラは大事な安住の場であるが、それさえも危うい。近代的なビル群が自然を破壊し押し迫り、地球温暖化で生態系が狂い、真ん中上のゴムの木は亜熱帯でも生育し、左側の一般植物は水が少なければ枯れていく過酷な環境に晒されている。人間社会と自然の赤い境界線は崩れ、ハチの身にもアラームが生じている。一方、そのような厳しい状況の中でもRose Shopが描かれ、バラと生き生きした若い女性が殺伐とした乾いた環境に潤いを与える。
先輩からは、絵は個々人がそれぞれ感じ取るものと言われており、勝手に書き連ねたが、私には環境破壊訴えの強いメッセージが感じられた。
美術展の後は、空手部同期の伊藤正人さん(s44入学)と卒業以来会って、銀座ライオンで飲んだ。
彼は、卒業後7年間製造業に従事したが、和食業に転じて地元で7年間働いた。ある時かって訪れたニュージーランドの和食店から引き合いがあり、それを機に31年間住みついている。彼の異文化経験、和食業の展開、風習の異なる社会での給料・資金繰りなど興味深い話は尽きなかった。そして、空手部気質に染まりきっていた彼が、大胆な生き方に苦労を重ね研ぎ澄まされて押し出しのいい紳士になっていた。明日のナイトフライトで、ニュージーランドに戻るという。大胆に決断した悔いのない素晴らしい生き方である。