2024年9月28日土曜日

新制作展観賞と一時帰国の同期歓迎会

 伝統もあり厳しい審査で定評がある新制作展で、五十嵐健治先輩(s42入学)が連続16回入賞の偉業を成し遂げた。

今回の作品のモチーフは、やはりハチであり、タイトルは ”Where's been hive” とし、200号の大作である。

右側の巨大なハチが、俯瞰的に時代環境の変換をみつめ、嘆いていると思われる。ハチはコロニーを形成しネグラは大事な安住の場であるが、それさえも危うい。近代的なビル群が自然を破壊し押し迫り、地球温暖化で生態系が狂い、真ん中上のゴムの木は亜熱帯でも生育し、左側の一般植物は水が少なければ枯れていく過酷な環境に晒されている。人間社会と自然の赤い境界線は崩れ、ハチの身にもアラームが生じている。一方、そのような厳しい状況の中でもRose Shopが描かれ、バラと生き生きした若い女性が殺伐とした乾いた環境に潤いを与える。

先輩からは、絵は個々人がそれぞれ感じ取るものと言われており、勝手に書き連ねたが、私には環境破壊訴えの強いメッセージが感じられた。

美術展の後は、空手部同期の伊藤正人さん(s44入学)と卒業以来会って、銀座ライオンで飲んだ。

彼は、卒業後7年間製造業に従事したが、和食業に転じて地元で7年間働いた。ある時かって訪れたニュージーランドの和食店から引き合いがあり、それを機に31年間住みついている。彼の異文化経験、和食業の展開、風習の異なる社会での給料・資金繰りなど興味深い話は尽きなかった。そして、空手部気質に染まりきっていた彼が、大胆な生き方に苦労を重ね研ぎ澄まされて押し出しのいい紳士になっていた。明日のナイトフライトで、ニュージーランドに戻るという。大胆に決断した悔いのない素晴らしい生き方である。



2023年10月6日金曜日

第86回新制作展に五十嵐先輩が入選

86年の歴史があり日本有数のトップレベル美術展である新制作展で、五十嵐健治先輩(S42入)が、15年連続入選の快挙を成し遂げました。

 これまでの作品は一貫して“ハチ”に関するもので、この作品のタイトルも“unbalanced nest”です。

ハチは世界の野菜・果実の1/3の受粉を行っており、人間社会の食生活には、非常に重要な存在です。しかし、地球温暖化による異常気象と、近代化による自然破壊で減少の一途をたどり、もはやハチの減少は、世界的問題にもなっています。ハチは、珍しく社会性昆虫に属し、女王バチを中心に、3万匹ほどのコロニーと呼ばれる集団で生活しており、異常気象、自然破壊に敏感に反応していくとのことです。

 この絵に対面した時には、その危機迫る人間とハチとの共存の危うさを感じさせられました。まず、絵画全体からは、私たちの昔の長閑な田園の原風景が吹き飛ぶメッセージを感じます。そして、前に突き出たカカシと巨大なハチが、鮮烈な残像イメージとして感動を残します。

後ろからは、近代的なビル群が押し寄せてきて、赤いラインで仕切られた自然との境界が迫ってきています。ハチの針は卵を産むための産卵管またはそれが変化したものですが、危機を感じて赤く灯っています。田園風景の象徴であるカカシの顔は、へのへのもへじではなく、スキのない神経質な眼であり、片手に無縁なはずの時計まで携えており、本来の一本足が二本足にもなり、ハチと同様に赤いラインが灯っています。

この生態系が狂ってきた窮屈な空間に、“unbalanced nest”は、構築されています。画面左側の殺伐とした広々とした乾いた空間は、異常気象によるものであり、上のほうは朽ちたコロニーの残渣でしょうか。

 尽きないほどに、種々なイメージが湧き出てきますが、これは愉悦のひとときであり、この絵がもたらしてくれるものでしょう。

 先輩から、下記の一筆がありました。

【この絵は、子どもの頃見た田舎の風景に都市化された風景をかさね、少なくなった自然、その中に生きる蜂の様子、蜂の巣を描いたものです。どちらかと言うと、自由に描きました。皆さま、どう感じられるか、ご鑑賞頂ければ幸いです。     五十嵐健治】





2021年5月22日土曜日

第39回上野の森美術館大賞展に12回目の入選

将来の日本の美術界をになう、個性豊かな作家を顕彰助成することを標榜として昭和58年より開催されている上野の森美術館大賞展に、五十嵐健治先輩(工S42入学)は、12回目の入選の快挙を果たしました。コンセプトは、一環して蜂の“Nest”です。

 

自由と純粋さを標榜し、84年の歴史がある国立新美術館での新制作展でも、13回も入選しております。今回は、五十嵐先輩にお願いし、初めて下記の絵の解説をお寄せいただいたので、それをもとにじっくりと鑑賞していただきたい。

 

【先輩からの寄稿】

今から10年ほど前自宅の庭に蜂の巣を発見し驚きそれから蜂の巣をテーマにした絵を描くようになった。

塀がなく草花や雑草の多い我家に蜜を求めて巣を作ったのは、まわり中コンクリートで覆いつくされ、自然破壊の結果と思うようになった。地球全体の環境の変化も気になりはじめた。

この絵は画面全体が黄色で構成され、黄色は個人的に好きで、黄色を多く使うようになった。

画面上部には、現在コロナ禍の中の山の手線改札口での群衆の状態を描いた。下部にはスズメ蜂の生育状態を表した。蜂が成長するには27日かかると言われているが、その成長過程を画面の中に表わし、時間と空間を同時に表現している。

その過程の中には人間と同様な家族内の葛藤がある。

これらの二つを共通に位置づけているのは「黄色の場」である。

その場で気が付いた視点や時間の全てを作品として「場」に表われる残像と記憶が関連性を保って全体像の作品とした。

 

「美的判断力は,快・不快の感情である。」 ― カントのことば

 

どう感じるかは、見る側におまかせしたい。

これを機に絵画に興味をもっていただければ幸いです。



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2年前の新制作展で、五十嵐先輩は、「絵はまず驚きを感じさせること、そして共鳴、共感を得ること」と言われたが、秀でた画伯の言葉の重みがあり、この絵はそれを彷彿させるものでした。

2021年1月28日木曜日

NHKスペシャル「わたしたちの”目”が危ない」の番組を観て

 

超近視時代の問題提起で、小学校の近視率が1年間で17%から23%と6%も上がったという実例が挙げられた。特に緑内障、白内障を引き起こす眼軸(眼球の直径)が伸びる近視が55%を占めているという。

 日本眼光学学会・理事の梶田医師が登場し、スマホなどを見る近業(30cm以内を見つめる行為)が、遠方を見ることと逆転したことが要因の一つと警鐘を鳴らす。伸びた眼軸は、生涯戻らないとのことである。

 また合わないメガネによる眼精疲労も多く、4万人以上の診察を行っているが、8090%は眼精疲労との指摘である。眼精疲労研究の第一人者として梶田医師が、魔法のように、特殊な調節機能解析装置を使いお笑い芸人のメガネを調節して仰天させた。

 眼軸の伸び防止には、2時間/日以上屋外で光を浴びることと、近業の間で遠方を見つめることだそうだ。

毎日の散歩に精を出しましょう。

2021年1月18日月曜日

梶田先輩!NHKスペシャルに登場!

会員の皆様

梶田先輩は、先般は「チコちゃんに叱られる」に出演されていましたが、今度は、NHKスペシャルに登場されるそうです。放送予定日等は、次のとおりです。

●番組名:NHKスペシャル「わたしたちのが危ない」

●放送予定日:2021年1月24日(日)21:00~21:49(NHK総合・全国)

NHKスペシャル公式HP

https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/ZVVWYYKJLV/

(R3.1.18 工藤眞仁記)

2020年5月4日月曜日

医師としてNHK出演 S47のOB

4月25日のNHK「チコちゃんに叱られる」という番組に、S47年工学部入学の梶田雅義さんが出演しました。港区に医院を持つ名眼科医院長とのことです。東京医科歯科大学の臨床教授も務めております。
 梶田さんは山形大学を卒業後、福島県立医科大学を卒業し、更にカリフオルニア大学バークレー校で3年間研究員として学んでいます。

 梶田さんたちがS47年に入学してきた時に、私たちが4年生でした。当時の山形大学空手道部は、隆盛を誇っていました。私どもS44年入学が東北地区総体で初制覇し、S46の三宅さんたち世代が東北地区総体で優勝し、更に梶田さん時代は、東北地区総体で準優勝です。


その4年間で、全日本学生選手権でベストエイト、和道流全国大会で日大を破り優勝など、全国レベルでも活躍しており、TVの画面を見ながら懐かしさひとしおです。

2020年2月9日日曜日

五十嵐先輩の個展鑑賞


26日に銀座の画廊“るたん”で、五十嵐健治先輩の個展を、佐藤会長、篠ケ谷さんとともに鑑賞した。2009年、2012年に続き、3度目の個展である。初日には、いちどきに18人も入り、鑑賞しにくいほどの盛況だったとのことである。

写真の“the nest”は、ひときわ重厚で深みのある絵である。色の三属性である色相、彩度,明度をイメージ通りに出すためには、油絵の具の調合に経験を要し難しく、また水彩絵の具と異なり下地の色が滲んで見えたりするが、それを逆に効果として用いることも手法であるとの説明を受けた。
しかし、肝心のこの抽象画の講釈は、先入観が入るからと一切黙して語らず、それではと勝手ながら自分流で鑑賞した。

ハチは世界の果実・野菜の3分の1を受粉しているといわれ人間社会に貢献し、一方、スズメバチなどは年間30人の死亡者を出し、自然界では蛇やクマなどと比較にならないほどの危険な存在である。その蜂の巣の生活空間を描いたものと感じた。
タイトルの“the nest”は、ミツバチではコロニーと呼ばれ、3万匹の蜂が生息する。一匹の女王蜂からすべてが産まれ強力な血縁集団である。働きバチの寿命が1ケ月程度だが、女王蜂は5年も君臨する。
女王蜂のもと、コロニーは独自の生活圏を作り、それぞれの彩りに染め上げていく。絵には明暗のコロニー、どろりとしたコロニーなどが描かれ、形状としてハニカムの正六角形の構造を無視して四角形もある。
コロニーは、人間の生活空間である家屋、軒先にも入ってくる。2枚のキャンバスの間に2cm幅程度の継ぎ板を設け赤のレッドラインが下地であり、それはコロニー間、人間社会との隔離を示すレッドラインとも思われたが、それさえも侵食していく。
暗くどろりとしたコロニーの上に仰向けに死んでいる働き蜂が描かれている。移動養蜂などでストレスを感じて免疫が落ちて死んだと思われる。近年、蜂群崩壊症候群のひとつとして問題化している。
蜂の生活空間は、人間社会の縮図なのであろうか。森羅万象に、いろいろな想像が湧いて出てくる素晴らしい絵である。

帰りは、近くの銀座ライオンで一献上げて、空手談義も含めて話に花が咲く。

新制作展観賞と一時帰国の同期歓迎会

 伝統もあり厳しい審査で定評がある新制作展で、五十嵐健治先輩(s42入学)が連続16回入賞の偉業を成し遂げた。 今回の作品のモチーフは、やはりハチであり、タイトルは ”Where's been hive” とし、200号の大作である。 右側の巨大なハチが、俯瞰的に時代環境...