2020年2月9日日曜日

五十嵐先輩の個展鑑賞


26日に銀座の画廊“るたん”で、五十嵐健治先輩の個展を、佐藤会長、篠ケ谷さんとともに鑑賞した。2009年、2012年に続き、3度目の個展である。初日には、いちどきに18人も入り、鑑賞しにくいほどの盛況だったとのことである。

写真の“the nest”は、ひときわ重厚で深みのある絵である。色の三属性である色相、彩度,明度をイメージ通りに出すためには、油絵の具の調合に経験を要し難しく、また水彩絵の具と異なり下地の色が滲んで見えたりするが、それを逆に効果として用いることも手法であるとの説明を受けた。
しかし、肝心のこの抽象画の講釈は、先入観が入るからと一切黙して語らず、それではと勝手ながら自分流で鑑賞した。

ハチは世界の果実・野菜の3分の1を受粉しているといわれ人間社会に貢献し、一方、スズメバチなどは年間30人の死亡者を出し、自然界では蛇やクマなどと比較にならないほどの危険な存在である。その蜂の巣の生活空間を描いたものと感じた。
タイトルの“the nest”は、ミツバチではコロニーと呼ばれ、3万匹の蜂が生息する。一匹の女王蜂からすべてが産まれ強力な血縁集団である。働きバチの寿命が1ケ月程度だが、女王蜂は5年も君臨する。
女王蜂のもと、コロニーは独自の生活圏を作り、それぞれの彩りに染め上げていく。絵には明暗のコロニー、どろりとしたコロニーなどが描かれ、形状としてハニカムの正六角形の構造を無視して四角形もある。
コロニーは、人間の生活空間である家屋、軒先にも入ってくる。2枚のキャンバスの間に2cm幅程度の継ぎ板を設け赤のレッドラインが下地であり、それはコロニー間、人間社会との隔離を示すレッドラインとも思われたが、それさえも侵食していく。
暗くどろりとしたコロニーの上に仰向けに死んでいる働き蜂が描かれている。移動養蜂などでストレスを感じて免疫が落ちて死んだと思われる。近年、蜂群崩壊症候群のひとつとして問題化している。
蜂の生活空間は、人間社会の縮図なのであろうか。森羅万象に、いろいろな想像が湧いて出てくる素晴らしい絵である。

帰りは、近くの銀座ライオンで一献上げて、空手談義も含めて話に花が咲く。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。

新制作展観賞と一時帰国の同期歓迎会

 伝統もあり厳しい審査で定評がある新制作展で、五十嵐健治先輩(s42入学)が連続16回入賞の偉業を成し遂げた。 今回の作品のモチーフは、やはりハチであり、タイトルは ”Where's been hive” とし、200号の大作である。 右側の巨大なハチが、俯瞰的に時代環境...